TOUTEN BOOKSTORE NEWSLETTER #91

ほぼ隔週火曜にお送りするニュースレターです。
toutenbookstore 2025.09.30
誰でも

#91 INDEX

  • HELLO

  • 新入荷&今週の1冊

  • TOUTEN ベスト (2025.9.15-2025.9.28)

  • イベント情報

  • AFTER TALK

🍂HELLO

こんにちは!

2階の展示室では唐澤龍彦さんの個展が始まりました。美術家であり音楽家でもある唐澤さんの作品が堪能できる展示です。2011年から、日々Instagramでアップし続けているドローイング作品や、アクリル画作品、個展のきっかけとなった文芸誌『るるるるん』の装画(案)・挿画など、さまざまな世界観を楽しめる空間になっています。

唐澤さんのペンドローイングが好きすぎて、毎日眺めるのをたのしみにしています。1コマ漫画のように、添えられている言葉と一緒に作品になっていて、シンプルだけど時に深読みしてしまうような作品の数々。こんなにスッキリとした気持ちになるのは、飄々とした犬さんや猫さん(時々熊さん)(さん付けしたくなる絵)の姿からか、秋晴れの空気と作品たちが見事に相まった空間に浸れているからなのか。とにかく草原でぐ〜っと伸びをしたみたいに心が軽くなる。

そしてびっくりなインスタレーション作品。それぞれの縦列が、箱に紐づいていて、つまみをあげると箱から飛び出して音も大きくなります。説明が難しいのですが、音響セットと映像作品が連動していると思っていただいて、ぜひ自由につまみを動かしてみてください。こういうシンプルなイラストレーションで静かに楽しめるのはとっても粋。朝の開店前、つまみをいじりながら楽しんでいたら、ふとアンビエント・ミュージックの心地よさに開眼した。もっと知りたい。

17日の金曜日の夜には唐澤さんが音楽家としてパフォーマンスをされます👏とっても楽しみ。予約不要、展示室にて、ワンドリンクでお楽しみいただけますのでぜひお越しください。

📚新入荷&今週の1冊

それがやさしさじゃ困る(鳥羽和久、植本一子=写真 / 赤々舎)
子どもに向けられる「善意」や「配慮」が、時に子どもの心を傷つけ、主体性を奪ってしまうという逆説を、教育現場の最前線で20年以上子どもと向き合ってきた著者・鳥羽和久さんが鋭く描き出す一冊です。「失敗させまい」「傷つけまい」という大人の"先回り"が、実は子どもの可能性を閉ざしてしまう──。本書では「学校」「親と子」「勉強」「受験」といったテーマを軸に、現代教育の盲点と私たち大人が抱える不安の影を浮かび上がらせます。単なる批判にとどまらず、大人の葛藤や弱さへの眼差しがこめられているからこそ、その言葉は深く胸に響きます。

海をこえて 人の移動をめぐる物語(松村圭一郎 / 講談社)
エチオピアの村で生まれ育ち、海外へ出稼ぎに行く女性たち。長年、村に通う文化人類学者の著者は、その話に耳を傾け、歩みを追いかけてきた。彼女たちの実感やリアリティと、海をこえて移動する人びとを国家の視線でとらえる言説と……。その隔たりをどう問い直し、語るか。考えながら綴るエッセイ。

ミシンは触らないの(中前結花 / hayaoki books )
『好きよ、トウモロコシ。』の中前結花さん新刊。出会ったばかりの人にもらったラブレター、母の涙とともにかけられた言葉で思い出す後悔、できないことばかりで苦しんだときに光をくれた友人の言葉……。読めばきっと、明日を生きる力が湧いてくる。持ち前のあたたかくやわらか、かつユーモラスな筆致で「忘れられない言葉」をまとめたエッセイ集。

新版 学校では教えてくれない差別と排除の話(安田浩一 / 皓星社)
「なぜ中学や高校で差別や排除を教えないのだろう?」という素朴な疑問をきっかけに、2017年に刊行された『学校では教えてくれない差別と排除の話』。ロングセラーの本書が、この度リニューアル。外国人労働者、ヘイトスピーチ、そして沖縄。現代日本の差別と排除の問題を、豊富な現場での取材を元に語り、解決への道を示します。新版発行にあたり、新型コロナウイルス禍による差別や排除の問題、そしてクルド人差別の現場の様子などを加筆。さらに、イラストレーター・文筆家の金井真紀さんとの対談を追加収録します。初回入荷分限定で安田さん、金井さんのサイン入り!

声を出して、呼びかけて、話せばいいの(イ・ラン 斎藤真理子、浜辺ふう=訳 / 河出書房新社)
家族という地獄をサバイブしてきた。日本と韓国を行き来し、自由を追求する唯一無二のアーティスト、イ・ランによる、渾身のエッセイ集。お母さんは狂ってて、お父さんはサイテーで、おばあちゃんは二人とも精神を病み、親戚はみんな詐欺師。そんな家族のもと、幼い頃から泣くことも笑うこともできず、いつも世界でひとりぼっちだった私が始めたのは、感情に名前をつけること。

\📚今週の1冊📚

群馬県桐生市をベースに活動する美術家・音楽家の唐澤龍彦さんの作品集。今回の展示の作品集とも言えます。

"すべては誰の身にも起こるような、実際に起きたことがあるような、逆にどこにも誰にも起きたことがないような…起きたことと起きなかったことは同じ道の分岐点の先にあるだけかもしれない。"

アクリル絵の具のカラー作品、ペン画にコンピュータで着色したカラー作品、日々描き続けているペン画作品、液状の透明画材を使用した作品に、それぞれ言葉が添えられている。散文のような、小さな小説のような、または一コマ漫画のセリフのような言葉たちが並ぶ。「ソファはわたしのために」。なににも縛られたくない自由な気持ちに寄り添ってくれる1冊。

📚TOUTEN BEST ( 2025.9.15-2025.9.28 )

33歳という日々 シングルマザー、ゆみの場合
33歳という日々 子なし夫婦、エリの場合
33歳という日々 独身彼なし、このみの場合(鈴木みろ / KADOKAWA)
人生につい"正解"を求めてしまったり、生き方を周りと比較してしまったり……「私だけの孤独」に寄り添うコミックです。鈴木みろさんにサイン本をたっぷり描いていただきましたが、完売しました……。サイン本の再入荷は今のところありませんが、通常本の追加の納品待ちの状態です。「ゆみの場合」のみ、特典ペーパーはつきます。在庫復活まで暫しお待ちくださいませ🙇

読点magazine、増補版
TOUTEN BOOKSTORE発行のZINE。2021年5月にクラウドファンディングのリターン用に制作し配布した『読点magazine、 特別版』に、開業1年後からスタートしたニュースレターの文章と、本屋ができてからのコラムを追記した増補版です。そろそろ追加発注をかけねばならぬ・・・。

小名浜ピープルズ(小松理虔 / 里山社)
東北にも関東にも、東北随一の漁業の町にも観光地にもなりきれない。東日本大震災と原発事故後、傷ついたまちで放射能に恐怖し、風評被害は受けたが直接的被害は少なかった、福島県いわき市小名浜。著者の小松理虔さんは、この地で生まれ育ち〈中途半端〉さに悶えながら地域活動をしてきた。当事者とは、復興とは、原発とは、ふるさととは――10年を経た「震災後」を、地元の人々はどう捉え暮らしてきたのか。魅力的な市井の人々の話を聞き、綴った、災害が絶えない世界に光を灯す、渾身の人物エッセイ。

おいしいが聞こえる文庫版(ひらいめぐみ / 角川春樹事務所)
二十年間集めてきた、たまごの上に貼られたシール。「煮込まれたトマト」「走るピーマン」など、自分で考えてみた食べ物の慣用句。シュークリームの甘さに救われた雨の日。おじいちゃんが作ってくれた袋麺のカレーうどん。「食べ物」を起点に、笑いから涙までがぎゅっと詰まったエッセイ三十七篇。ひらいめぐみさんの原点である大人気自費出版本を、書き下ろしを大幅に加え、装いも新たに文庫化。

ポストフェミニズムの夢から醒めて(菊地夏野 / 青土社)
ネオリベラリズムと結託した「リーン・イン」や「女性活躍」の欺瞞を問い、セックスワーカーやトランスジェンダーへの差別、「慰安婦」問題などそこからこぼれ落ちるものにまなざしを向けることで、見えてくるものとは。フェミニズムをあきらめないための、たしかなる提言。

👀展示&イベント情報

展示情報【25.9.27-10.18】唐澤龍彦作品展
群馬県桐生市の美術家・音楽家の唐澤龍彦さんの個展。きっかけは当店もお世話になっている3月クララさん。唐澤さんは3月クララさんが属する文芸ユニット『るるるるん』の書籍の装画を手がけられていて、今回縁があり個展を開催いただくこととなりました。唐澤さんのペンドローイングのアカウント(instagram)は(時に風刺的な視点も含む)ユーモアたっぷりの世界観で、個人的にすっかりファンの一人になっています。作品展はペンドローイング以外にも多様な手法/表現で制作された作品群に出合えます。

展示ヴィジュアル。唐澤さんのドローイングがたくさん。

展示ヴィジュアル。唐澤さんのドローイングがたくさん。

展示情報【25.10.24-11.8】本村綾「ひとりの時間」
銅版画作家・本村綾さんの個展。昨年、東京・奥渋谷の本屋さん「SHIBUYA PUBLISHING & BOOKSELLERS(SPBS本店)」にて開催された個展「ひとりの時間」が、名古屋に巡回します。SPBS本店で展示した作品に加え、あらたな新作を含めた版画作品を展示予定。会期中には銅版画に挑戦できるワークショップも!ぜひリンクよりご確認ください。
(本村さんより)「たくさんのひとに愛されているTOUTEN BOOKSTOREという場所で、ここで過ごす時間を大切に想うみなさんと、本展をとおして出会うことができれば幸いです。」

1F展示・イベント情報【25.10.18】『バナナのらんとごん』原画展&トークイベント「搾取から連帯へ、食べ物でつながる世界。バナナから見えること」
フィリピンの「バランゴンバナナ」を主人公に、バナナが日本にやってくるまでのプロセス、交易が支える現地のバナナ農家の暮らし、フードロスになってしまうバナナがある事実など、楽しい旅物語を通してたくさんの考える種をまく内容になっている『バナナのらんとごん』の原画展を1階の奥スペースで開催しています。原画展最終日の18日は、「搾取から連帯へ。食べ物で繋がる世界、バナナから見えること」と題したトークイベントを行います。フィリピン・ネグロス島で起きた飢饉をきっかけに設立され、以来40年、アジア・世界との連帯をテーマに活動を続けてきた、株式会社オルター・トレード・ジャパン/NPO法人APLAさんが、一般的なバナナが抱える社会課題や安全性の問題、歴史的背景について、また規格外バナナを利用するプロジェクト「ぽこぽこバナナプロジェクト」について語ります。規格外バランゴンバナナのお土産つき!身近な存在バナナから考える社会のこと。ぜひお越しください🍌

イベントのご予約はぽこぽこバナナプロジェクト事務局【poco2banana@gmail.com】まで、件名に「イベント予約:10/18@TOUTEN BOOKSTORE」、本文にお名前、人数を明記の上メールをお願いします。メールのリンクはこちら。

【アーカイブ配信中!】熱田空襲を知る展トークイベント 講師:西形久司さん(主催:熱田空襲遺跡を守る有志の会)8月7日から始まる「熱田空襲を知る展」と連動したトークイベントです。ピースあいち理事で名古屋空襲研究者の西形さんによるトークイベントです。何が起きたのかを知り、いま起きている戦争にも引きつけながら考えられる時間に。

【アーカイブ配信中!】『その〈男らしさ〉はどこからきたの? 広告で読み解く「デキる男」の現在地』刊行記念トークイベント
小林さんのトークは何度聞いても面白い!今回はたくさんのテレビCMを観たり、戦争時のプロパガンダ広告と選挙ポスターの比較をしてみたり、海外のCMを観たりと、また前回と異なった内容で聞き入りました。特に男性の広告表象におけるケアについて、「鍛錬」(「肌を鍛える」など)にされたり、「ありのままの弱さ」を肯定することがあまりないように見えました。男性同士のケア、セルフケアも大事にされてほしい。。。集団化されることや、ロボ化(=非人間化)されることなど、可視化・言語化することとっても大事。今回は感想の数もとても多かったです。ぜひ!アーカイブを見てほしいです!

【25.10.22】出張星読み+選書(主催:私設図書館もん・つっちー)
私設図書館もんの館長・つっちーさんの星読み、好評につき、9月と10月も開催が決定!自分の生まれた瞬間の星の配置から、その人の性質や得意とされること、人生のタイミングの話など、読み解いていきます。わたし自身受けてみて、腑に落ちることもたくさんあってびっくりしました💫なによりも客観的に自分を見直すことができて、ふっと肩の力が抜ける時間を過ごせるひとときなのがよかった。今回も星だけでなく(?)本読みでもあるつっちーさんが、選書をしてくれるサービスがついています📚

【25.10.25】『クィアのカナダ旅行記』刊行記念イベント「どうつくる? クィアな本/空間」
2023年と24年、二度のカナダ滞在をもとに、バックラッシュが強まる日本の政治的状況を踏まえながら記録した『クィアのカナダ旅行記』。25年夏に再びカナダを訪れたという水上さんに、トロント・プライド2025への参加など、最新の旅の報告もいただきながら、本書について語っていただきます。また、本書を編集した天野さんもお越しいただけるとのことで、「クィアな本をつくること」について伺いつつ、セーファーな空間づくりを考える本屋の目線から、「クィアな棚/空間をつくること」について日々思っていることなどをおふたりとお話したいと思います。ここでしか聞けない「クィアな本/空間」をめぐるトーク、みなさんのご参加をお待ちしています!

【25.10.24/25/11.8】本村綾「ひとりの時間」ワークショップ「銅版画をつくろう」
本村綾さんの個展「ひとりの時間」に合わせてのワークショップ。銅版画の「ドライポイント」技法でハガキサイズの銅版画を制作します。9×12cmの銅板にニードルで直接描画し、インクを詰めてプレス機で刷る工程まで、銅版画の基本的な制作を体験できます。貴重な体験になると思いますので、ぜひご参加ください〜!

【25.12.6】『彼女は裸で踊ってる』第2巻刊行記念イベント 岡藤真依トークイベント〜ストリップ、踊り子、フェミニズム〜(主催:ばんの)
『彼女は裸で踊ってる』第2巻刊行を記念して、トークイベントを開催します。作者の岡藤真依さんと、ストリッパーの黒井ひとみさんをお招きして、ストリップという表現の世界を舞台に、自身の“体”を取り戻す姿を描く本作について語ります。ゲスト・黒井ひとみさんによるプチダンスショーあり。

☕️AFTER TALK

ようやく涼しい時間ができ、ぼうぼうに生えた雑草を抜いて、自分が住んでいる部屋以外の手入れというものをし始めました。思えばもう3年以上(次の1月で丸5年・・・)この建物と一緒に生活、ではないか、商いをしていて、店の中だけが自分の空間ではないこと、周辺の手入れをすることもここで暮らすということ、と思えるようになってきた。共益費を支払うマンション暮らしだとなかなか育ちづらい考え方だと思ったり。最近はかなり高齢化している沢上商店街の(主に理事長の)仕事の整理や分担などもあり、このあたり一帯を意識することも増えています。

そんな中、クリエイティブ・リンク・ナゴヤが主宰で金山の土地・文化を掘り起こし、再解釈するためのメディア(だと勝手に思っている)「Mined&Mind」というウェブメディアがスタートしました。アスナル金山がなくなること、再開発されることが念頭にあるそうです。地べたから始まるまちづくりがされていってほしいなあ。ディレクションはLIVERARYの武部さん。10月28日にCallejera STAND GARAGEさんで開催されるキックオフイベントに私も登壇します。どんな話に転がるのだろう〜。詳細は下記リンクをご覧ください☺️

他にも近隣の店舗とコラボしたイベントを開催予定なので、ますます地域について考える機会がふえそうです。

それでは、まだまだ大変な世の中ですが、好きな飲み物を飲んで、ご自愛しつつ、今週もそれぞれの読書時間をお過ごしください。

#NOW READING 『新版 学校では教えてくれない差別と排除の話』(安田浩一 / 皓星社)

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