TOUTEN BOOKSTORE NEWSLETTER #88

ほぼ隔週火曜にお送りするニュースレターです。
toutenbookstore 2025.08.20
誰でも

#88 INDEX

  • HELLO

  • 新入荷&今週の1冊

  • TOUTEN ベスト (2025.8.4-2025.8.17)

  • イベント情報

  • AFTER TALK

🍨HELLO

こんにちは!お盆も明け、ちょっと落ち着いてきたかな〜という店内です。

8月9日には西形久司さんによる名古屋空襲のトークイベント「名古屋空襲を語る 空襲の記憶からいまの世界で起きていることを見てみよう キーワード:不発弾・ガザ・ウクライナ・万博・フクシマ」、13日には名古屋拠点のクィア・フェミニストの視点をもつ実践型の研究団体・Offbeat Feminist Research Collectiveさん主催のトークイベント「文化産業における性表現の自由は?」、と、充実のイベント続きでした。両方ともとても興味深かったです。西形さんのイベントはまだアーカイブ配信をしておりますので、ぜひ聞いてほしい!

空襲の話の中でも特にびっくりしたのは、当時アメリカは火災保険の等級から燃えやすい地域を判定して、空襲のポイントを決めていたという話。アメリカの保険会社を使っている人が多く、情報が渡っていたとのこと。そこまで綿密に生活空間・人を焼き払うことが計画されるというのが空襲の恐ろしさ。戦争は起こらないようにすることが全てだという思いを強くする。不発弾も多く残っていて、ガダルカナル島では毎年20人ほどが不発弾によって死亡または負傷しているとの話も。「なぜその責任のある人たちは去る前に後始末をしなかったのか」という調理中に地中の不発弾の爆発により左手の指をふき飛ばされた現地の方の言葉が戦争の本質を突いています。

熱田空襲の展示は今週土曜まで。ぜひお越しください。

📚新入荷&今週の1冊

NEUTRAL COLORS 6( 加藤直徳=編 / NEUTRAL COLORS )
第6号の特集は「滞在」。観光で立ち寄る場所でも移住でもなく、ある一定期間留まった時に起こる、静止したような時間と、偶然隣りあった人との関係性について掘り下げます。ベトナム、イギリス、オランダ、メキシコ、インド、ドバイ、高知、名古屋など、滞在地は多岐に渡ります。初回特典トートバック付きです。

貝がら千話 8(モノ・ホーミー)
モノ・ホーミーさんの新刊です!「貝がら千話」は、まずその日に思い浮かんだ図案をそのまま描いてみて、図案を描いたことによって引き出されたおはなしを記録する、という方法で一日に一作づつ制作したシリーズです。2021年1月6日から2021年4月15日までの100日間に制作した図案とお話を収録しています。

生理について男にできること(伊藤健介)
生理って女性だけのもの?男性には無関係なの? の疑問から実際に6人の女性に取材して その症状・対策法・そして男性に求めるとしたら何? をまとめてイラストレーションで紹介した作品。

牛を食べた日(千葉貴子 / らくだ舎出帆室)
中心から遠く隔たった辺境の地、熊野の山里旧色川村。この地で、牛耕の復活をめざす農家・外山家が、大事に育ててきた牛を食べることにした。牛を屠畜場へと運び、肉にしてもらうまで。その肉をみんなで分かち合い食べた日のこと、そして後日談。生活者誰しもの土壌を耕す、らくだ舎出帆室発のルーラル・ノンフィクション。

松明のあかり(バリー・ユアグロー、柴田元幸=訳 / twililight)
アメリカ合衆国在住の作家バリー・ユアグローがトランプ政権下のアメリカに住む不安を小説に。『ボッティチェリ 疫病の時代の寓話』からわずか5年。ユアグローから再び届いた「アメリカのいまを伝える」緊急文書。「ここに収められた物語は心の、思いきっていえば魂の訴えである。」(柴田元幸)訳者・柴田元幸さんのサイン入りで入荷。

\📚今週の1冊📚/

本書は写真研究家でジェンダー表象について執筆や飜訳などを行っている小林美香さんが東京でキュレーションした『その「男らしさ」はどこからきたの?展』を経て出版された小林美香さんの単著。広告の中で「男らしさ」はどのように表現されているのか、社会的な背景や歴史的な文脈に照らし合わせながら分析し、その表現の由来を問い探っていく内容です。

「選挙ポスターに見るジェンダー表象」といった新たなトピックや、性教育の視点、ジェンダー医療の視点で見た「男らしさ」規範についてのインタビューなど、前回の展示の内容からさらに観察対象を増やし、多様な観点に拡がっているように思います。

“筆者が「その『男らしさ』はどこからきたの?」と問いかけるのは、現在にいたるまでの過程を振り返った上で、この先の道筋と展望を模索するためです。”(「はじめに」より)

来月13日はトークイベントを開催します!本書のお話を通して、男女二元論的、異性愛規範的に固定化されがちなジェンダー表象について問いかけ、みなさんといっしょにその先を考えられる時間になればと思います。イベント現地参加の方には特典ステッカーのプレゼントがあります。ぜひご参加ください!

今まさに読んでいるのですが分析が本当に面白い……。おすすめです!

📚TOUTEN BEST ( 2025.8.4-2025.8.17 )

未熟なラッコカメラマンのはじめてのアラスカ日記(らっこばやし / RACCOLABO)
2025年5月、念願のアラスカへラッコを追いかけて写真を撮影してきたラッコカメラマン・らっこばやしさんによるはじめてのアラスカ旅の記録🦦。全国のラッコファンの皆さんからの注文があり、先週はひたすら出荷作業をしていました。かっこよくてかわいい野生のラッコ。ぜひ!

読点magazine、増補版
本チャンネルの影響か、通販でもよく売れております。脚立を駆使して撮影頑張りました。(笑)ぜひご覧くださいませ〜!

名古屋と半日旅(京阪神エルマガジン社)
関西の情報誌『Meets Regional』を刊行している京阪神エルマガジン社の名古屋特集本です。当店も取材いただきました。名古屋最新ガイドとしてもとってもおすすめの1冊です!

ババヤガの夜 文庫版(王谷晶 / 河出書房新社)
ダガー賞を受賞後、重版に次ぐ重版で、当店でもよく売れておりました。暴力シーンには思わず目を伏せてしまう私ですが薄目にしながらも面白くて一気読みしました。王谷さんの「リアルの暴力が溢れている世界では、フィクションの暴力は生きていけません。」というダガー賞での受賞スピーチを聞いて、6月に展示をした漫画『DRAMATIC』の「劇的なるものから遠く離れて」の言葉が、本当の意味で理解できたな、と思う。小説家の言葉の力はとても強い。

シモーヌ 2025年夏号(シモーヌ編集部 / サッフォー)
シモーヌ・ド・ボーヴォワールの『第二の性』出版から70年後の2019年、「人は女に生まれるのではない、女になるのだ」から一歩先を目指すために現代書館から創刊した『シモーヌ』がリニューアル!分断と孤立を越えるコレクティブなフェミニストマガジンです。当店もお世話になっている菊地夏野さんも編集委員として参画されています。小林美香さんが参加する鼎談も。

👀展示&イベント情報

展示【25.8.7-23】熱田空襲を知る展
終戦直前の1945年6月9日、8分間の空襲で2,068人の死者を出した熱田空襲。戦時中、軍用機生産の拠点であった愛知時計電機などが狙われたこの熱田空襲では、多くの学徒動員の学生が亡くなりました。熱田空襲一般犠牲者慰霊のための「平和地蔵尊」が撤去の危機を迎えた際にできた「熱田空襲遺跡を守る有志の会」の代表の林さんは中日新聞の取材で「戦争を伝えるものがなくなると記憶もなくなり、新たな戦争が始まる。それを止めたい。」と語っています。記憶を受け継ぐための展示になればと思います。毎日のように学生さんやお子さん連れの方もいらっしゃってうれしい。地域で起きたことを知るための時間に、ぜひ!お越しください。

【アーカイブ配信中!】熱田空襲を知る展トークイベント 講師:西形久司さん(主催:熱田空襲遺跡を守る有志の会)
8月7日から始まる「熱田空襲を知る展」と連動したトークイベントです。ピースあいち理事で名古屋空襲研究者の西形さんによるトークイベントです。何が起きたのかを知り、いま起きている戦争にも引きつけながら考えられる時間に。

【25.8.27】出張星読み+選書 
予約枠完売しました🙏私設図書館もんの館長・つっちーさんの星読みが当店でもスタート!自分の生まれた瞬間の星の配置から、その人の性質や得意とされること、人生のタイミングの話など、読み解いていきます。わたし自身受けてみて、腑に落ちることもたくさんあってびっくりしました💫なによりも客観的に自分を見直すことができて、ふっと肩の力が抜ける時間を過ごせるひとときなのがよかった。今回速攻で完売してしまいましたが、今後も開催予定ですのでどうぞよろしくお願いします🙏

【25.9.13】『その〈男らしさ〉はどこからきたの? 広告で読み解く「デキる男」の現在地』刊行記念トークイベント
広告の中で「男らしさ」はどのように表現されているのか、社会的な背景や歴史的な文脈に照らし合わせながら分析し、その表現の由来を問い探っていく内容の本書。トークイベントでは著者の小林美香さんによる本書のお話を通して、男女二元論的、異性愛規範的に固定化されがちなジェンダー表象について問いかけ、みなさんといっしょにその先を考えられる時間になればと思います。
こちらのpodcastもぜひ聴いてみてください〜!

【25.9.17】『小名浜ピープルズ』刊行記念イベント「私はどのようにして暮らしを楽しみながら「個人史」に行き着いたか。」
東日本大震災と原発事故から10年。魅力的な地元の人々と話し、綴った、災間を生きるすべての人へ捧ぐエッセイ『小名浜ピープルズ』(里山社)。本書の刊行を記念して、著者の小松理虔さん、街づくりの研究者である古橋敬一さんとのトークイベントを開催します。進行は、かすがい市民文化財団の山川愛さんです。「私はどのようにして暮らしを楽しみながら「個人史」に行き着いたか。」をテーマに、トークされます。大きな社会の話と小さな個人の話をどのように行き来していくか、という話にもつながっていきそうで、楽しみ。

【25.10.25】『クィアのカナダ旅行記』刊行記念イベント「どうつくる? クィアな本/空間」
2023年と24年、二度のカナダ滞在をもとに、バックラッシュが強まる日本の政治的状況を踏まえながら記録した『クィアのカナダ旅行記』。25年夏に再びカナダを訪れたという水上さんに、トロント・プライド2025への参加など、最新の旅の報告もいただきながら、本書について語っていただきます。また、本書を編集した天野さんもお越しいただけるとのことで、「クィアな本をつくること」について伺いつつ、セーファーな空間づくりを考える本屋の目線から、「クィアな棚/空間をつくること」について日々思っていることなどをおふたりとお話したいと思います。ここでしか聞けない「クィアな本/空間」をめぐるトーク、みなさんのご参加をお待ちしています!

☕️AFTER TALK

先日、久々に東京に行ってきました。17日まで東京都写真美術館で開催されていた「被爆80年企画展ヒロシマ1945」はものすごい人でびっくり。パレスチナの連帯グッズを身につけている人も多かったです。原爆投下から1ヶ月後、朝日新聞が原爆は国際法違反と報道し、その後占領軍が「原爆報道を禁止する」プレスコードを発令したというのは先日の西形さんのお話で聞いていました。写真展ではその後も「伝えなければ」という一心で写真を撮り続けた報道記者の人たちの写真が並んでいて、記録を残すことの重要性を、重く感じた展示でした。

夜は当店でも開催いただいた寺田燿児さんの『DRAMATIC』原画展の東京展を観に。会場のMIDORI.soがめちゃくちゃかっこよかったです。都会に潜む蔓まみれの建物が、時間は過ぎていくだけではなく積み上げていくものだということを思い出させてくれる。展示の仕方/会場が変わると雰囲気が全く違うことを肌で感じられて、行ってよかった〜。名古屋展ではなかった下絵もたくさん見れてうれしかったです。漫画の下絵、大好物。会場を練り歩くワニ(の作品)🐊は連れて帰りたいくらいかわいかった。こちらも最終日で、寺田燿児さんの弾き語りと宮坂遼太郎さんの屋上独演がありました。これは本当、夏の贈りものだった。個人的な話だけど、いまだに父の死をぽっかり受け取ったままでいる自分にとって、ちょっとだけ、進めそうだな、と思えた時間でした。

翌日は本屋巡り。行こうと思っていた本屋がことごとく午後オープンだったので午前中は新宿の喫茶店でモーニングをしたのち、阿佐ヶ谷に移動して書楽を引き継いだ八重洲ブックセンターに行き、Morcで上映中だった映画「黒川の女たち」を観ました。言葉を失うくらい衝撃的なこと。戦争は終わった後も戦争被害は続いていくこと。名古屋ではタイミングを逃してしまっていたので、観ることができてよかったです。

午後は蟹ブックス(高円寺)→LOU(中野)→タコシェ(中野)→コ本や(神楽坂)→かもめブックス(神楽坂)と本屋&カフェを巡りました。暑くてクタクタになり、リストアップした半分も回れなかったけど、楽しかった〜。店内でのアテンションの仕方、陳列のバリエーション、品揃えなど勉強になりました。楽しかった〜。(二度目)関東方面も、ちょくちょく行きたい。移動中、「戦争と家父長制を憎む」テプラが高円寺駅前の信号ど真ん中の中央分離帯のとこに貼られてて、二度見した。わかる。写真撮っておけばよかった〜。

それでは、まだまだ大変な世の中ですが、好きな飲み物を飲んで、ご自愛しつつ、今週もそれぞれの読書時間をお過ごしください。

#NOW READING 『その<男らしさ>はどこからきたの?』(小林美香 / 朝日新聞出版)

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