TOUTEN BOOKSTORE NEWSLETTER #90

ほぼ隔週火曜にお送りするニュースレターです。
toutenbookstore 2025.09.16
誰でも

#90 INDEX

  • HELLO

  • 新入荷&今週の1冊

  • TOUTEN ベスト (2025.9.1-2025.9.14)

  • イベント情報

  • AFTER TALK

✍️HELLO

こんにちは!秋の空気を感じたと思ったら暑さが戻ってきたけれど朝晩の気温差はあったり、空調の調整が難しい。最近はイベント続きでバタバタとしておりました。イベントの設営をもっとスムーズにできるようアイテムを投入したいなあと考えながらも明日もイベントが!『小名浜ピープルズ』刊行記念イベントで、小松理虔さん、古橋敬一さん、山川愛さんが当店にいらっしゃいます。

イベントの告知画像。クリックするとイベントの告知ページに飛びます。

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小松理虔さんの書籍は地方創生に携わる人なら読んだ方も多いのではないでしょうか。以前『ただ、そこにいる人』という本で読書会をする機会があり、小松理虔さんの共事者の考え方(当事者ではない人の関わりかた)に共感し、いつかお話を聞いてみたいなあと思っていたところに、これまたいつかご一緒できたら、と思っていた出版社・里山社さんから本が出るということで楽しみな新刊でした。(里山社さんの本は『その猫の名前は長い』や『〈寝た子〉なんているの?』や『ウジョとソナ』などがあります。注目し続けている出版社です。)『小名浜ピープルズ』は東日本大震災と原発事故後、傷ついたまちで放射能に恐怖し、風評被害は受けたが直接的被害は少なかった、福島県いわき市小名浜という土地に住む人々に話を聞き綴られた1冊。人の話を聞くこと、個人史として記すこと、一つ一つの語りの異なりによって自身の考えがまた揺れ変化していくこと。イベントのトークは、社会と個人の間を行き来をする過程を経た「個人史」がテーマになっています。語りを本にして、また本から語られること、厄災の多いこの世界に生きる私たちにとって、とても重要なトークになる予感がしています。現地参加のみ。ぜひ、一緒に考える時間にしましょう。

📚新入荷&今週の1冊

アナキズムQ&A(栗原康 / 筑摩書房)
「QさんAさんのウィットと叡智に満ちたアナキズム漫談。違うから、深まるんだ。友/敵の垣根を超える方法は、アナキストが知っている」byブレイディみかこさん。QさんAさんの軽快なトークで、自分の中の固定観念から解放され、人を縛る社会の仕組みから逃れ、統治から自由に生きる!大橋裕之さんのイラストが合いすぎている。

「いきり」の構造(武田砂鉄 / 朝日新聞出版)
「迷惑」を忌避する社会で際立とうとして、「いきり」が幅を利かせ、暴走する。「わからないのはバカ」「別に迷惑かかってないし」「政治家になってから言えよ!」「切り取りだろ!」……。「従順」か「居丈高」か。世の中に蔓延(はびこ)る、この二択から逃れ、ちゃんと深く息を吸うために、疲弊した社会の問題点を掴まえる。社会、“私”という個人、日本人論のトライアングルの中に「いきり」を浮かび上がらせることを試みた一冊。

33歳という日々 シングルマザー、ゆみの場合(鈴木みろ / KADOKAWA)
『33歳という日々 子なし夫婦、エリの場合』『33歳という日々 独身彼なし、このみの場合』に続く「33歳という日々」シリーズ全3冊、それぞれ絵柄の異なる鈴木みろさんのサイン・イラスト入りで入荷しました🙏特典ペーパーもつきます。人生につい"正解"を求めてしまったり、生き方を周りと比較してしまったり……「私だけの孤独」に寄り添うコミックです。

\📚今週の1冊📚/

菊池さんの最新刊!出ました!ネオリベラリズムと結託した「リーン・イン」や「女性活躍」の欺瞞を問い、セックスワーカーやトランスジェンダーへの差別、「慰安婦」問題などそこからこぼれ落ちるものにまなざしを向けることで、見えてくるものとは。フェミニズムをあきらめないための、たしかなる提言。

ポストフェミニズムとはなんぞや?という方にとっても読みやすいかと思います。構造的な問題が個人の問題に矮小化されやすい中で、重要な視点がたくさん含まれています。以前当店で開催されたTOUTENおしゃべりCLUB「99%のためのフェミニズムについて、もっと話そう!」の配信がポリタスで始まっています。『ポストフェミニズムの夢から醒めて』を読んでからまたおしゃべりしたい……!(今まさに読書中なのですが本当あれこれしゃべりたくなる!!!!)

目次

Ⅰ ポストフェミニズムの時代に可視化されるもの

第1章 憧れと絶望に世界を引き裂くポストフェミニズム――「リーン・イン」、女性活躍、『さよならミニスカート』
第2章 ポストフェミニズムとネオリベラリズム――フェミニズムは終わったのか
第3章 ネオリベラルな家父長制と女性に対する暴力
第4章 可視化するフェミニズムと見えない絶望――ポストフェミニズムにおける(再)節合に向けて
第5章 ポストフェミニズムから99%のためのフェミニズムへ
第6章 『逃げ恥』に観るポストフェミニズム――結婚/コンフルエント・ラブ/パートナーシップという幻想

Ⅱ 不可視化されるものとフェミニズムの未来
「雑多なフェミニズム」をめざして―第二部へのはしがきに代えて

第7章 「慰安婦」を忘却させる植民地主義とポストフェミニズム――『帝国の慰安婦』、スピヴァク、ポストコロニアル
第8章 フェミニズムは右傾化したのか?――ネオリベラル・フェミニズムの世界
第9章 AV新法をめぐるフェミニズムの混乱
第10章 安倍/統一教会問題に見るネオリベラル家父長制――反ジェンダー運動とネオリベラリズムの二重奏
第11章 99%のためのフェミニズムと私たち
第12章 リーン・イン・フェミニズム批判と田中美津の〈どこにもいない女〉
終章 「#MeToo」と「Ni Una Menos」から

📚TOUTEN BEST ( 2025.9.1-2025.9.14 )

本チャンネルの影響か、まだまだ通販でもよく売れております!ありがたい&本屋を作ることに興味ある人がこんなにいるのだと思うと、心強い。

その<男らしさ>はどこからきたの?(小林美香 / 朝日新聞出版)
本書は写真研究家でジェンダー表象について執筆や飜訳などを行っている小林美香さんが東京でキュレーションした『その「男らしさ」はどこからきたの?展』を経て出版された小林美香さんの単著。広告の中で「男らしさ」はどのように表現されているのか、社会的な背景や歴史的な文脈に照らし合わせながら分析し、その表現の由来を問い探っていく内容です。サイン本でご用意!

『ゆきのゆきちゃん』(きくちちき / ミシマ社)
「わたし ゆきちゃん」「ゆきと おなじ なまえなの なんでか しってる?」ねこのゆきちゃんが雪がふりしきる山のなか、森のどうぶつたちに尋ねます。ちいさなうれしさを、ずっと大事にしておくために。りす、ふくろう、うさぎ……名前の由来を尋ねていくうちに、共通点が見つかって、友だちがふえていくのが愛おしい。遊んでいる様子はもう言葉では表せられない愉快さがあって、みんなのびのび生き生きしていてかわいいのです。銀世界を表すような印刷は素敵でかっこいい。

スペクテイター〈54号〉パンクの正体(エディトリアル・デパートメント=編)
カルチャー誌・スペクテイター最新刊!パンクとは何か?どのようにして生まれ、社会をどう変えていったのか?関係者への取材と文献調査を通じて、その正体を明らかにする。

ドキュメンタリーで知るせかい(宇多丸、伴野智 / リトルモア)
ライムスター宇多丸さんの映画本、今回はドキュメンタリー映画専門の動画配信サービス「アジアンドキュメンタリーズ」の代表・判野智さんとドキュメンタリー作品31本を語り尽くします。また、阿古智子さん、岡真理さん、荻上チキさん、勝又郁子さん、宮永健太郎さんによる寄稿も収録されていて、読み応えたっぷりです。店頭では本書に出てきた本や寄稿されたみなさんの本などを集めた「せかいを知る」フェアも開催中!普段ドキュメンタリーを見ない人もぜひ手に取ってほしい1冊です。

👀展示&イベント情報

きくちちきさんの絵本『ゆきのゆきちゃん』(ミシマ社)の原画展を開催します!暑い日が続きますが、せめて絵本の中だけでもふわふわした雪のことを思い出しながら冬の世界を堪能いただけたらと思います。絵本のほかに、なんと版画作品や、かわいいかわいいグッズの販売もございます。和紙に描かれた原画の迫力と美しさを、ぜひお楽しみください。

展示情報【25.9.27-10.18】唐澤龍彦作品展
群馬県桐生市の美術家・音楽家の唐澤龍彦さんの個展を開催します。きっかけは当店もお世話になっている3月クララさん。唐澤さんは3月クララさんが属する文芸ユニット『るるるるん』の書籍の装画を手がけられていて、今回縁があり個展を開催いただくこととなりました。唐澤さんのペンドローイングのアカウント(instagram)は(時に風刺的な視点も含む)ユーモアたっぷりの世界観で、個人的にすっかりファンの一人になっています。作品展はペンドローイング以外にも多様な手法/表現で制作された作品群に出合えるので、大変楽しみです。

展示ヴィジュアル。唐澤さんのドローイングがたくさん。

展示ヴィジュアル。唐澤さんのドローイングがたくさん。

【アーカイブ配信中!】
熱田空襲を知る展トークイベント 講師:西形久司さん

(主催:熱田空襲遺跡を守る有志の会)8月7日から始まる「熱田空襲を知る展」と連動したトークイベントです。ピースあいち理事で名古屋空襲研究者の西形さんによるトークイベントです。何が起きたのかを知り、いま起きている戦争にも引きつけながら考えられる時間に。

【アーカイブ配信中!】
『その〈男らしさ〉はどこからきたの? 広告で読み解く「デキる男」の現在地』刊行記念トークイベント
小林さんのトークは何度聞いても面白い!今回はたくさんのテレビCMを観たり、戦争時のプロパガンダ広告と選挙ポスターの比較をしてみたり、海外のCMを観たりと、また前回と異なった内容で聞き入りました。特に男性の広告表象におけるケアについて、「鍛錬」(「肌を鍛える」など)にされたり、「ありのままの弱さ」を肯定することがあまりないように見えました。男性同士のケア、セルフケアも大事にされてほしい。。。集団化されることや、ロボ化(=非人間化)されることなど、可視化・言語化することとっても大事。今回は感想の数もとても多かったです。ぜひ!アーカイブを見てほしいです!

【25.9.17】『小名浜ピープルズ』刊行記念イベント「私はどのようにして暮らしを楽しみながら「個人史」に行き着いたか。」
東日本大震災と原発事故から10年。魅力的な地元の人々と話し、綴った、災間を生きるすべての人へ捧ぐエッセイ『小名浜ピープルズ』(里山社)。本書の刊行を記念して、著者の小松理虔さん、街づくりの研究者である古橋敬一さんとのトークイベントを開催します。進行は、かすがい市民文化財団の山川愛さんです。「私はどのようにして暮らしを楽しみながら「個人史」に行き着いたか。」をテーマに、トークされます。大きな社会の話と小さな個人の話をどのように行き来していくか、という話にもつながっていきそうで、楽しみ。

【25.9.22&10.22】出張星読み+選書
(主催:私設図書館もん・つっちー)私設図書館もんの館長・つっちーさんの星読み、好評につき、9月と10月も開催が決定!自分の生まれた瞬間の星の配置から、その人の性質や得意とされること、人生のタイミングの話など、読み解いていきます。わたし自身受けてみて、腑に落ちることもたくさんあってびっくりしました💫なによりも客観的に自分を見直すことができて、ふっと肩の力が抜ける時間を過ごせるひとときなのがよかった。今回も星だけでなく(?)本読みでもあるつっちーさんが、選書をしてくれるサービスがついています📚

【25.10.25】『クィアのカナダ旅行記』刊行記念イベント「どうつくる? クィアな本/空間」2023年と24年、二度のカナダ滞在をもとに、バックラッシュが強まる日本の政治的状況を踏まえながら記録した『クィアのカナダ旅行記』。25年夏に再びカナダを訪れたという水上さんに、トロント・プライド2025への参加など、最新の旅の報告もいただきながら、本書について語っていただきます。また、本書を編集した天野さんもお越しいただけるとのことで、「クィアな本をつくること」について伺いつつ、セーファーな空間づくりを考える本屋の目線から、「クィアな棚/空間をつくること」について日々思っていることなどをおふたりとお話したいと思います。ここでしか聞けない「クィアな本/空間」をめぐるトーク、みなさんのご参加をお待ちしています!

【25.12.6】『彼女は裸で踊ってる』第2巻刊行記念イベント 岡藤真依トークイベント〜ストリップ、踊り子、フェミニズム〜
(主催:ばんの)『彼女は裸で踊ってる』第2巻刊行を記念して、トークイベントを開催します。作者の岡藤真依さんと、ストリッパーの黒井ひとみさんをお招きして、ストリップという表現の世界を舞台に、自身の“体”を取り戻す姿を描く本作について語ります。ゲスト・黒井ひとみさんによるプチダンスショーあり。

☕️AFTER TALK

ON READINGさんが、国際芸術祭「あいち2025」が開催される2025年9月13日~11月30日の期間中、愛知芸術文化センターB2にて、ON READINGが期間限定のミュージアムショップ『TEMPORA(テンポラ)』を作ったとのことで、行ってきました。

たくさんのブランド・アーティストと協業していて、ON READINGさんがいかに地域に根を張って活動してきたかが伝わるし、棚からもON READNGさんの熱を感じる。「すごい」しか言ってなかった私。規則性のある本棚になった時、こうやって棚を作るのか!と興奮しつつ、限られた什器で作る豊かな売り場についてもたいへん勉強になりました。2ヶ月の間に何度も通いたい……。でも営業時間だだ被り。泣

購入品↓TEMPORAオリジナルドリップパック。美。『手の倫理』は出会ったら買おうと思っていた。『ありふれたくじら』はELVISPRESS新刊!『IMAJU』のガザ特集。『本をつくる赤々舎の12年』『反戦アンデパンダン詩集』

しっかし、愛知県には本当怒りしかない。国際芸術祭「あいち2025」にはパレスチナ出身のアーティストも参加し、植民地主義への批判的眼差しも含んだ作品もある中、パレスチナへの入植、虐殺を続けるイスラエルとの事業連携を継続している。批判も多いはずなのに、なぜ動かないんだろう、という疑問を「暮らしから考える名古屋」のメンバーと愛知県議会事務局に投げているけれど、透明性のある返事はくるのだろうか……。今年はずっと行きたかった態変の公演もあり、「あいち2025」自体をどのくらい楽しんでいいのだろうかと(というか心の底から楽しめないよ!泣)、モヤモヤしている。もう本当、イスラエルマッチングプログラムやめてよ!の気持ちを抱えている。

それでは、まだまだ大変な世の中ですが、好きな飲み物を飲んで、ご自愛しつつ、今週もそれぞれの読書時間をお過ごしください。

#NOW READING ポストフェミニズムの夢から醒めて(菊地夏野 / 青土社)

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