TOUTEN BOOKSTORE NEWSLETTER #84
#84 INDEX
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HELLO
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新入荷&今週の1冊
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TOUTEN ベスト (2025.5.27-2025.6.22)
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イベント情報
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AFTER TALK
🌿HELLO
体調を崩し、久しぶりの更新となりました🙇
みなさまも体調お気をつけて〜!
2階展示室では「絵と短歌展〈巡回展〉「100年後」の7年後 絵・寺田マユミ 短歌・土門蘭」がスタート。2017年10月、京都文鳥社から出版された歌画集『100年後あなたもわたしもいない日に』。そのころわたしは東京にいて、一緒に働いていた社長・柳下さんが土門さんと作った出版社・京都文鳥社から出版されたその歌集を(たぶん)かもめブックスで購入した。今までに見たことのない歌集で、ところどころトリミングされたページが、言葉を隠したり、絵を覗かせたり、それによって短歌が物語みたいに、変化したり突然表れたりした。
"拓けども 拓けどもまだ日光も 言葉も届かぬ 密林を待つ"
生きるために書かれた土門さんの短歌と、言葉を包み込むように描かれた寺田さんの絵が、遊びだして、とてもロマンティックに見えたのを覚えている。孤独で、でも高潔な、(これは『スルーロマンス』から拝借)私かもしれないだれかの心をとらえたような美しさ。
7年が経ち、私は独立して本屋を開業し、この本の実売数は1万部を超え、今回新たな作品をもって、当店にも巡回いただけることになりました。
"どれだけの時重ねてもひとつにはなれない代わりに言葉を紡ぐ"
今回、20点の新作が並んでいます。個人的には、7年前よりも、他者の気配が濃くなったと感じました。それは家族かもしれないし、大切な友人かもしれないし、もう会えないあの人だったりする。わかり合いたい、届けたい、その想いもまた美しい。展示のステートメントにも書かれている(共通の知人でもある)ミクロコスモスの飯飯さんのことを偲ぶ。
7年という月日に着々と版を重ねてきたその歩みは大きい。止まっているようにしか思えない時もあるけれど、時間は経過しているのだということを、確かに噛み締めるような展示だと思います。当店の設計を務めたちゅうたくん(=國重裕太さん)の額装は、影が生まれて作品に余韻を作り出す素敵な作品になっています。ぜひ作品集とともにお楽しみください。

この歌も大好き。
📚新入荷&今週の1冊
体の贈り物(レベッカ・ブラウン、柴田元幸=訳 / twililight)
アメリカの作家、レベッカ・ブラウンの代表作を復刊。逃れようのない死の前で、料理を作り、家を掃除し、洗濯をし、入浴を手伝う。喜びと悲しみ、生きるということを丸ごと受け止めた時、私は11の贈り物を受け取った。エイズ患者とホームケア・ワーカーの交流が描き出す、悼みと希望の連作短篇。著者書き下ろし「『体の贈り物』三十年後」を収録。金井冬樹の装画による新装版。
ユニヴァースのこども(著者:中井敦子、森岡素直 / 創元社)
敦子さんと素直さんは、互いを大切なパートナーとして、敦子さんが出産した満生ちゃんと3人で暮らしている。素直さんの性は女性/男性のどちらにもとどまらず、3人の関係は〈母親/父親/こども〉の枠に収まらない。性のあり方、関係性のあり方を枠にはめず、名前をつけず、ゆらぎ変化していく全体として日々の生を生きようとしてきた2人が、出会いの頃から満生ちゃんの誕生、現在の暮らしまでの出来事と思いを語った「声のおたより」の記録。(装画:ひうち棚)
ここは安心安全な場所(植本一子)
あなたとわたしの現在地をみつめる植本一子のエッセイシリーズ「わたしの現在地」、第二弾。植本さんがここ数年通っている遠野のとある場所と馬について書いた8遍のエッセイと、1つの詩、さらにこのエッセイ集の主要人物である、とくさんこと徳吉英一郎さんの寄稿文が収録されています。子供が大きくなり、母であることから離れる時間が生まれた、自分ひとりの時間をどのように立っていくかということ。東京から離れた場所で馬と過ごす時間によって生まれた内面の変化が静かに描かれています。
多聞さんのおかしなともだち 上巻・下巻(トイ・ヨウ / KADOKAWA)
他の人には見えない、人ならざるものとの会話を楽しむ、妙な大人、“多聞”。そして、二人の女と暮らしている子、“内日(うつい)さん”と、自分の名前を忘れてしまった不思議な仔、“多聞の友達”。女性同士の恋愛を友情と呼ばれ、なかったことにされてきた親達と、本当のことをまだ話せないでいる、わたし達。恋愛をする人も、しない人も、わからない人も、決めてしまいたくはない人も、ただ覚えていてほしい、忘れないでほしい、ひと夏の大阪の物語。特典ペーパー届きました。
ヨルダンの本屋に住んでみた(フウ / 産業編集センター)
「ここで働かせてください!」アラビア語はおろか、中東・ヨルダンの場所すら知らないのに、ネットで一目惚れしたヨルダンの本屋に行き、働き、住んでみたフウさんの破天荒でパワフルな日々。実はフウさんには『読点magazine、』の広告を出稿いただいたことがあり、その時からヨルダンの本屋での日々について書いたものを本にしたい&ヨルダンに届けるのが夢、という話を聞いていたので、本が出ると聞いて、夢が進んどる〜〜〜!!!おめでとうございます〜〜〜!!!とすごく嬉しかったです。びっくりなエピソードが溢れていてとっても面白い1冊です。
\📚今週の1冊📚/
国籍とは、誰が引いた線なのか。自分にとって、国籍とはどういうものなのか。国籍とアイデンティティを、一緒くたにしてはいないだろうか。本書は異なるルーツや生まれ育ちをたずさえて「ともに生きる」ための土台を模索する、「わたし」と「国籍」の関係を考え、探る6編のダイアローグです。
本チャンネルでも取り上げさせていただきました。東京都都議選、参院選と、選挙が近づくにつれ排外主義的な言説、外国人へのヘイトを煽るような言説(デマも)が増えてきていると感じます。刊行スケジュールが後ろ倒しになった背景があり、この収録は少し前だったのですが、今こそ、読んでほしいと強く感じます。国籍という制度の穴がこんなにもたくさんあること、それによって生きることそのものが困難になっている人がいること。国籍に関わる問題がいかに複雑で、一括りにできず、一人一人の状況に応じて制度が追いついていない部分がこんなにもあるのかということ。
最近イタリア人漫画家・ペッペ氏が描いた『ENDO』という漫画を読みました。第二次世界大戦下に日本で捕虜となった実在するイタリア人一家(ダーチャ・マライーニの家族です)を描いた漫画です。日本軍から"敵国人"とみなされた主人公らに対し食糧をコントロールして十分に渡さないなど、本当に酷い扱いを受けていました。軍人の中にも良心のある人がいたり、終盤に過ごす寺では一人の人として接してる日本人もいたりしますが、印象的だったのは終戦後、彼らを一番敵対視していた軍人の、手のひらを返したような態度。人を人として見ず、人の尊厳を平気で踏み躙っていたその軍人の態度の変化に、ぽっかりとした穴を感じました。国にアイデンティティを委ねることは、人としての思考を放棄することになる。そんなことを思いながら、国籍という制度にある隙間を考えていました。
目次
はじめに
◎制度と偏見×安田菜津紀(フォトジャーナリスト)
◎見た目と思いこみ×サンドラ・ヘフェリン(エッセイスト)
◎カテゴリーと対話×サヘル・ローズ(俳優)
【鼎談】◎関係性の「砦」が制度の未来を変える 加藤丈太郎×三木幸美×木下理仁
◎無国籍と証明×長谷川留理華(無国籍ネットワーク運営委員)
◎痛みと出会い×金 迅野(牧師)
おわりに
📚TOUTEN BEST ( 2025.5.27-2025.6.22 )
ジェノサイドを生きる(エマーン・アルハーッジ・アリー)
ガザ出身のパレスチナ人ライター、エマーン・アルハーッジ・アリーさんが執筆した短編エッセイ3選を翻訳したZINE。今も続くイスラエルによるジェノサイド(大量虐殺)を生き抜くなか執筆された、一人でも多くの人に読んでほしい文章。かつてくつろぎと楽しみだった場所が悲しみや怒り、苛立ちの場所になること。希望を詰めこむはずだったリュックサックが逃げるのを助ける存在になったこと。数字ではない、その人の一つ一つを想像することが、日々”情報”を受け取る中でとてつもなく重要なことだと思う。経費を抜いた売上収益は全額エマーンさんとご家族を支援するために送金されます。
遺骨と祈り(安田菜津紀 / 産業編集センター)
福島、沖縄、パレスチナを訪れ、不条理を強いられ生きる人々の姿を追った、著者の6年間の行動と思考の記録。遺骨収集に取り組む2人の男性の言動を通して、歪んだ現代日本の社会構造を浮き彫りにするとともに、「未来の人の明日をつくる」ためには何が必要なのかを提示する。現地に赴き、自らの実体験から言葉を紡ぎ出した気鋭のジャーナリストの問題提起の書。
・DRAMATIC 寺田燿児短篇漫画集(寺田燿児/猋社)
14篇の短篇漫画と、ブックギャラリーポポタムでのグループ展で展示された作品「十八番」、「独裁者の背中シリーズ」を収録した漫画集。反戦漫画『TORA TORA TORA TORA』(東南西北kiken刊)を経て、日常の微細な火花を描いた著者が唱える“劇的なるものからとおくはなれて。”日常にある(かもしれない)、他の誰も気づいていないと感じてしまうような「わたし」もしくは「あなたとわたし」だけの出来事。その試みは、大きなスローガンから自分の声を取り戻す作業のようにも思える。正気を保って生きていけるように。たっぷりのユーモアと、そばにある想像力、愛が散りばめられた1冊。
生活は物語である 雑誌「クウネル」を振り返る(木村衣有子 / BOOKNERD)
さよなら、雑誌文化。 ハロー、SNS。レシピ本。住居。生活。食。モノとの距離。スローライフ。ていねいなくらし。家事。フェミニズム。ジェンダー。読んでいた人たちの、生き方の変遷。文筆家・木村衣有子がひとつの時代の分水嶺を、雑誌『クウネル』とともに総括する。文化論のようでいて、極私的な手触りの、ファンタジーと現実を行き来するクウネルと雑誌文化への濃厚なオマージュ。
・私が私らしく死ぬために 自分のお葬式ハンドブック(野口理恵 / rnpress)
死ぬときの呼吸のこと、食事のこと。宗教のこと、費用のこと、お墓のこと。うんざりするような「決まりごと」と、これからの私たちのこと。たくさんの事例を紹介しながら綴るルポルタージュ。
👀展示&イベント情報
【展示】【25.6.21-7.12】絵と短歌展〈巡回展〉「100年後」の7年後 絵・寺田マユミ 短歌・土門蘭
2017年10月、京都文鳥社から出版された歌画集『100年後あなたもわたしもいない日に』。土門蘭の短歌と寺田マユミの絵により切り取られた日常が一冊の本となってから、丸7年が経ちました。書店や読者の方との直取引のみで販売してきた本書は版を重ね、実売数は1万部に。多くの方に愛される作品となりました。『「100年後」の7年後』は、それを記念した新作20点の巡回展です。7年という時を経た今、二人が切り取る日常はどう変化しているのか、ご覧いただけたら幸いです。

フェア情報【25.6.13-7.19】ちょっと本屋に行ってくる。展
本と本屋さんにまつわる日常を描く脱力エッセイ『ちょっと本屋に行ってくる。』シリーズ第二弾の発売を記念して、オリジナルアイテムを販売する小さなイベントを開催中です。BOOKSELLERS CLOTHING issueの新作Tシャツやトートバッグ、ちょっと本屋に行ってくる。オリジナルアイテム、高畠純さんとのコラボTシャツを販売!『ピースランド』のTシャツ、買いました。ラブアンドピース!

イベント情報
【25.6.27】READING GHOSTS
月に1度の金曜日、夜営業の時間にひっそりと現れる「READING GHOSTS」。ただ読書をする時間を共有する場所です。18時から20時までは2階のカフェ席は読書席となります。20時から21時はなにを読んだか、最近の本の話など、その場で居合わせた人たちと読書会をします。
3月クララさんから一言 「おばけになって本を読もう」
【25.6.28】ジェンダー読書会なごや「慰霊の日をすぎても沖縄の話をしよう」(主催:ジェンダー読書会なごや)
6月23日は、太平洋戦争の末期、沖縄での地上戦で犠牲になった人たちを悼む「沖縄慰霊の日」です。沖縄の地上戦では、県民の4人に1人が犠牲になったと言われています。今回のお話し会はジェンダー読書会なごやさんの案内文のとおり、”知識の量に関わらず、それぞれの想いを共有し合える”場。沖縄の歴史や置かれている現状について知ったり、自分の想いを話したり、心を寄せる、そんな時間になるのではないのかなと思います。いつも重要なイベントを開いてくれて感謝の気持ち。
【25.6.28】大原扁理×石井あらた トークイベント「隠居と山奥ニート、これからどうする?」
10年以上、メインストリームから外れたオルタナティブな生活を実践してきた大原扁理さんと石井あらたさん。結婚・子育て・親の介護などのライフステージによって、その生活は少しずつ変化してきています。そして隠居や山奥二ートでなくても、こうした変化に直面し、これまでの生き方を手放さなくてはならないときがあります。ふたりは変わっていくことをどのように受け止めているのでしょうか。この10年の心境の変化や、社会の変化、そしてこれからのことなど、自由にお話いただきます!
【25.7.12】TOUTEN BOOK CLUB『反家父長制結婚式完全記録本』
"結婚と家父長制、資本主義、SNS、労働、美的規範……プレ花嫁・卒花嫁による当事者研究と実践の記録。"松本ユイナ著『反家父長制結婚式完全記録本』の刊行を記念して、読書会を開催します。未読でも参加歓迎です。
- いままさに結婚式の準備をしているがモヤモヤしてる人
- 将来結婚式をやるつもりだが、従来の結婚式の規範に違和感があって悩んでいる人
- これまで結婚式に参列したときにしんど!!!と思ったことがある人
- 現行の婚姻制度に違和感がある人 などなど、ぜひご参加ください!
【25.7.18】そらさんぽ読書会〜科学と文学の空間(そら)をとぶ〜
"科学と文学の間を自由に飛び回りながら、新しい知識と想像力を楽しむ読書会です。科学の視点から文学を読み解き、文学の美しさの中に科学を見つける——そんな知的な冒険に出かけませんか?"ぎふ中日文化センター文学講座講師・木呂子豊彦さんによる文学講座&読書会。
☕️AFTER TALK
さてさて、2025年参議院選挙がもうすぐ始まります!7月3日公示、20日投票が見込まれています。先日は選挙漫遊をされているまこさんのイベント「参院議員選挙愛知選挙区予定候補者のSNSを見てきゃっきゃする会」に行ってきました。予想される候補者の顔ぶれは選挙ドットコムがわかりやすいとのことでチェック→愛知県のリンク。Xが一番候補者の情報が多いということで、まこさんはすでに「参院選2025 愛知選挙区」リストを作成されておりました。候補者のツイートが一覧で見れるリストです。ここから街宣日程をチェックして、候補者に会いに行って話を聞くといい、とのこと。皆さんもぜひフォローしてみてください。
「候補者は有権者にとっていいことを言う。何を言っていないかが重要」、という話をしていて、なるほど〜!と思いました。(思いもよらぬ質問だった場合、考えてもらうきっかけにもなりますしね。)そのためには自分が何を大切に思っているかチェックリストも作らないと。VOTEマッチングを利用するのも手。まだ個人的にはハードル高いですが、やっぱり会いに行くことが大事なんだな〜としみじみ。選挙漫遊ツアーしてもらいたい。笑
それでは、まだまだ大変な世の中ですが、好きな飲み物を飲んで、ご自愛しつつ、今週もそれぞれの読書時間をお過ごしください。
#NOW READING 『世界史の実験』(柄谷行人 / 岩波書店)
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