TOUTEN BOOKSTORE NEWSLETTER #80

ほぼ隔週火曜にお送りするニュースレターです。
TOUTEN BOOKSTORE 2025.04.15
誰でも

#80 INDEX

  • HELLO

  • TOUTEN ベスト (2025.3.31-2025.4.13)

  • 新入荷&今週の1冊

  • イベント情報

  • AFTER TALK

🌬️HELLO

こんにちは!春の嵐。今日の名古屋は雨が降ったり風が吹いたり、荒れ模様でした。

📚お知らせ📚金山駅近くの「ANAクラウンプラザホテルグランコート名古屋」さんの新しい宿泊プラン「BOOKING/BOOKING」の選書を担当しました。新潮社さんとのコラボということで、新潮文庫から5冊選びました。宿泊すると本1冊がもらえるプランで、なんとその本に巻かれたオリジナルブックカバーはホテルの30Fカクテルラウンジ「Wing Lounge」の利用券付きなのです。本を見せて入場できるのいいなあと思って、ブックカバーに印刷してもらう仕様にしていただきました🍸担当Oさんは本を絡ませたプランをずっと作りたかったとのことで、この度新リリースとなりました。期間が決まっておりますが、名古屋に宿泊の予定がございましたらぜひご利用ください☺️

旅、ということで、先日熊本に行ってきました。1泊2日、熊本市内と水俣市に行ってきました。なかなか詰め込んだ旅になりました。ちょっと長くなりそうですが書き出します。

『読点magazine、』をたくさん販売してくださっている「古本と新刊 scene」に行き、高岡さんにご挨拶しておしゃべり。店名のとおり、古本と新刊がテーマの中で分かれて置いてあって、こういう置き方もあるのかと新鮮に感じた。ヴィレッジ・ヴァンガード出身というのが関係されているのか、コミック棚もあって、楽しかった。ぴょんぬりらさんのサインや『青騎士』の作家さんの色紙など、じっくり見させてもらいつつ背景を聞く。書店主との話は実感を持ってできるので楽しい。いつも時間が惜しい。
そのあとは旅の目的の一つ、坂口恭平さんの美術館「Museum」へ。熊本県内の移動を見誤り、坂口さんに当初お伝えしていた予定時間を変更してしまったけれど柔軟に対応してくださって感謝。(涙)ニューヨークでの展示の話を聞きつつ、最近描き始めた漫画の話を聞く。パステル画も素敵だったけど、坂口さんの水彩画で描く柔らかくも洗練された色彩がすごく好きで、漫画も水彩で描かれてるのを見て胸がいっぱいになる。昨年当店に来た時にはまだ「漫画を描きたいんだよね」という話をしていたのに、もう連載が決まっている。凄まじい。熊本日日新聞と、『MONKEY』でも掲載されるそうで、早く書籍化しないかな〜〜〜〜楽しみ〜〜〜。「Museum」と同じビルにあるレコード店「斧琴菊」に移動し、パンクなtakeshiさんの知り合いに会い『Grist』の既刊を手に入れれた。パンクな人たちが全国でゆるくつながっていて、安心して会話する。坂口さんとはそこでお別れをして、「斧琴菊」で出会った『Grist』の寄稿者の方と橙書店へ。行かないとわからない、というのはまさにこのこと。小さくも広い、本が教えてくれる深い世界。自分だけの場所と感じさせてくれる空間。『アルテリ』も扱わせてもらっているので田尻さんにもご挨拶。花粉症の話にもなり、喉に効きそうな飴(ニッケ玉)をいただく。ありがたい。緑化やそれぞれの政治の話をしていたら、路面電車の時間になったので水俣へ移動する。水俣病センター相思社の「水俣病歴史考証館」へ。

半世紀を経た今も人々は便利さ・豊かさという呪縛から解き放たれてはいません。水俣病事件は人間のあり方を根元的に問い続けています。水俣病事件の真実と意味を明らかにすることは人類の未来にとって重要な意味があります。 水俣病歴史考証館はそのために努力を続けています。
相思社HP「人間のあり方を問い続ける水俣病」より

水俣病の症状の発生、原因究明、公害認定、患者運動、水俣病訴訟といった流れを展示品とともに解説している館になります。原因調査のために行われた動物実験では、838匹の猫が犠牲になっていて、その実験が行われた「猫実験の小屋」や、患者運動の時に送られてきた誹謗中傷の手紙(ヘイト団体の言葉とそっくりなワードばかりで、ツールが変わっても誹謗中傷の内容は変わらないのだと驚く)など、生々しい歴史が残されている。名古屋では5月11日に、水俣病・東海の会さんとわっぱの会さんが共催のイベントが開催されます。「食べることの過去・現在・未来〜歴史に学び、未来につなぐ〜」トークは藤原辰史さん。私も行きたいな〜と思っています。もっと知りたいし、考えたい。水俣で宿泊して、いい天気の中、作家・石牟礼道子さんの書斎を本屋にした、カライモブックスさんへ。カライモブックスさんは京都で本屋を続けられていて、2023年に、水俣へ移住されました。『さみしさは彼方』(岩波書店)を読んでから行ったので、石牟礼道子さんへの思いや移住までの道のりを思い、場所の重みを感じる。人権・反戦・公害・フェミニズムの本がずらりと並ぶ。たまたま居合わせた常連Sさんが相思社で働いている子供を持つ方で、その方も移住者とのこと。患者団体で活動している住民もいれば、水俣病と距離を置きたい住民もいるし、水俣に惹き込まれ移住した人たちもいる、それは相思社の資料からも感じたことだったけれど、その土地の複雑性を認識して、無知に気づく。

帰りはSさんに車に乗せていただき、新水俣駅へ。飛行機で名古屋に戻りました。

思っていた以上に心が満ち満ちになった旅でした。遠い土地の人に会うことで、今も遠くにいるはずの人のことを思って、勝手に元気をもらえる。今日も店をオープンしているのだろうか、本を並べているのだろうか、カレーを出しているのだろうか、その場所場所に行く人がいるのだろうかと想像する。それぞれの持ち場で日々営みながら生きていることに勇気をもらう。

そんなこんなで店に戻って、棚を眺めて、あれこれさわり始めています。

📚TOUTEN BEST ( 2025.3.31-2025.4.13 )

・『LOCKET 07』(内田洋介=編集 / EDIT BY BODY)
真っ当でいてオルタナティブなインディペンデントマガジン『LOCKET』の最新号は映画館特集。明滅する世界を彷徨うように映画館を旅した1冊。インドでもっとも豪華な映画館から、建築の巨匠ゆかりの映画館へ。写真家はルーマニアで美しい瞬間を瞳に焼きつけ、ウクライナで爆発音に耳をすませます。特典リソグラフポスター付き。

・『隙間 3』(高妍 / KADOKAWA)
「二二八事件の犠牲者は台湾人だけじゃない。琉球人も確かにここにいたんだ」歴史と文化を、そして植民地化された悲しみを共有している台湾と琉球。それぞれの歴史と人を見つめることで、楊洋(ヤンヤン)は台湾人としてのアイデンティティを確立していく……。第3巻、発売しました。

・『群れから逸れて生きるための自学自習法』(向坂くじら、柳原浩紀 / 明石書店)
「勉強するのに仲間はいらない。むしろ、ひとりでいるために勉強が必要なのだ」。群れず、つるまず、あなた自身でいるための学び方とは。その試みは、他者を理解し、世界をゆがみなく捉える第一歩となる。一斉授業に困難を抱える中高生から、学び直しを求める大人まで。

・『随風』(書肆imasu
文学フリマや独立書店の店頭を席巻する随筆/エッセイムーブメントに呼応する文芸誌、ついに創刊!執筆陣敬称略:宮崎智之、仲俣暁生、友田とん、早乙女ぐりこ、海猫沢めろん、オルタナ旧市街、ササキアイ、鈴木彩可、作田優、岸波龍、竹田信弥、柿内正午、横田祐美子、野口理恵、北尾修一、森見登美彦、円居挽、あをにまる、草香去来、西一六八

・半分姉弟 1(藤見よいこ / リイド社)
ミックスルーツの人々の日常と溢れる感情を鮮やかに描いた、わかりあえなさと手を繋ぐ群像劇。差別する側・される側の描き方も、言葉への落とし込み方も、漫画の表現もうますぎる。軽やかな会話が多いので誰にでも薦めたくなるし、たくさん読まれてほしい。現在品切れですが特典冊子付きで再入荷予定です。

📚新入荷&今週の1冊

・なかよしビッチ生活 エトセトラコミックス版(とれたてクラブ / エトセトラブックス)
恋愛は政治。異性愛生殖至上主義にサヨナラ!からだにしみ込んだ「フツー」を脱ぎ捨てて、地獄なこの世であきらめずに生きていく。ビッチでクィアなフェミニスト・コミックがエトセトラブックスより商業出版化!

・みえないもの(イリナ・グリゴレ / 柏書房)
デビュー作『優しい地獄』の著者、ルーマニア出身の文化人類学者イリナ・グリゴレの最新作。娘たちと過ごす青森の日々。ふとよみがえる故郷ルーマニアの記憶。そして、語られてこなかった女たちの物語――。虚実を超えて、新たな地平を切り開く渾身のエッセイ。

・砂の境界(ギーターンジャリ・シュリー、藤井美佳=訳 / エトセトラブックス)
夫を亡くし沈んでいたはずの母が、ある日突然起き上がる。ヒジュラーの友と時を過ごし、娘と旅する先はインド・パキスタンの国境線。カラスは喋り、路は目撃し、神話や哲学も語り出す。あらゆる境界を越え母は進むーー不可視化された女性の無限を描く、インド作家初邦訳。

・『あやとり』(千種創一 / 短歌研究社)
"もう何も奪わないでくれ 震わせて真冬に洗うひまわり、造花の"
戦争体験者への取材に基づく連作「つぐ」や、尾張藩主の御巡覧と伴走した「知多廻行録」(アートサイト名古屋城2024出展インスタレーション作品)を含む265首を収録。

\📚今週の1冊📚/

サバキスタンの続編きたー!!!!ということで、翻訳者の鈴木佑也さんにインタビューしました。『サバキスタン』はロシア発のグラフィック・ノベルです。1巻ごとに時代/社会背景が異なっていて、それぞれ読み応えがあるフルカラーコミックなのですが、根底に独裁者への視線、"自由"という言葉の扱い方、歴史と民衆などのテーマが交差していて、読めば読むほど発見があります。

翻訳の鈴木さんは主に「ソヴィエト建築様式」時代の政治と建築の関係性を研究されていて、その時代の建築の表象全て解説してほしいくらいお話が面白かったです。講義あったら受けたい。

👀展示&イベント情報

【展示

本当におちつくところはどこにあるのか?をテーマとした作品「おちつくところ」を制作しているとりもちさんの個展。「おちつくところはどこなのよ?」の絵本の原画だけでなく、朗読映像も流れています。(とりもちさんの朗読の声がすごい落ち着きます。)ゆっくりとお楽しみいただきたい空間。ぜひお越しください!

☕️AFTER TALK

めっちゃ長くなってしまったのですが、書いておきたい!
熊本の長崎書店も好きでした。店の前にはコミック雑誌、幼児向け雑誌があり、店内に雑誌や旅行書もしっかりありつつ、壁の人文コーナー!アート(音楽、民藝含む)、人文(ケア、水俣病、ハンセン病、反差別、エトセトラやあいだで考えるシリーズなど)、哲学といった形でぎしっと棚差し!

ちょっと逸れたとこに展示スペースでは「パレスチナの猫」写真展が開催されていました。レジにはフリーペーパーがギチっと。熊本の郷土本もしっかりある。かっこいい街の本屋。食レポみたいな本屋レポになりました。他にも本屋を見つけては入っていました。本屋のことを考えるよろこびがすごいので新刊『町の本屋はいかにしてつぶれてきたか』を読むのが今週一番楽しみです。(当店には4/17に入荷します。)

先日名古屋に来ていた栞日の菊地さんと話していた「独立書店は何から独立しているのか」トークがもっとしたい。菊地さんが来るタイミングで金山ブラジルコーヒーにて東郷清丸ライブがあり、栞日も清丸さんとご縁があったそうで、一緒に観に行き、「最高〜〜〜〜」となっていました。清丸さんの音楽からはもう、"つくる喜び"が溢れ出していて、すごく感動した。土の上に立っている。本当に目が離せないアーティストというか、人間のひとり。

それでは、まだまだ大変な世の中ですが、好きな飲み物を飲んで、ご自愛しつつ、今週もそれぞれの読書時間をお過ごしください。

#NOW READING 『本なら売るほど2』(児島青 / KADOKAWA)

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